「HAVE FUN!」ゲームマスターズブック

ワールドガイド 

 GMは「HAVE  FUN!」を使用して、様々な冒険の世界を作ることができるが、ここでは一例として、「パクス地方」の「シクレタ」を紹介する。なお、このような設定は、ゲームを始める前に必ず用意しなければならないものではない。PLとGMが何度もゲームを遊んでいく中で、登場した人物や地名がなんとなく組み合わさってできていく、という感覚で十分である。

パクス地方

 中海と呼ばれる海に浮かぶ島々や周辺の大陸の総称。未だ電気及び蒸気の力は発見されていないが、鉄製の武器や農具の利用は行われており、大規模な石製の建築物も建てられている。産業革命以前の中世ヨーロッパーのイメージ。山岳や森林の開発は大規模には行われておらず、人間の文明と魔物世界の境界は曖昧である。パクス地方の沿海部では、いくつかの都市国家が集まって「連合」と呼ばれる国家連合を形成している。

 パクス地方のさらに北部には荒野が広がっており、「神々の終焉の地」があるという伝説がある。近年、北方から蛮族がパクス地方に侵入し紛争となっており、パクス地方の北部の国々は武力の向上を急いでいる。東方とは交易ルートが存在しており、パクス地方では見たことがないような生産物や武器、文化などの流入がある。南方にはオアシス地域があり遊牧民が暮らしている。このオアシス地域を抜けると砂漠が広がっている。パクス地方の西方には大海が広がっているので、パクス地方は世界の西端にあると考えられている。

 また、この地方には古代に魔法王国の隆盛・衰亡があったという伝説があり、現代でも使用される魔法はその名残だとされている。

シクレタ

 パクス地方の「連合」に所属する都市国家。特定の王が治めているのではなく、職業組合(ギルド)の長や昔からの名士などから構成される「協議会」によって、自治が行われている。沿海部の要所にあり、現在は海上交易の中心地として栄えているが、かつては、天候が急変することが多い交通の難所であって、小さな田舎の村に過ぎなかった。流浪の僧侶が嵐を治めたことにより現在の発展があるとの、都市起源伝説がある。

パクス地方における冒険者の立場

 山岳や森林は人間の版図ではなく獣やモンスターの領域である。そのため、交易の護衛などの必要性から「護衛」という職業が生まれた。

 この「護衛」から、力の向上、知識の収集、財宝の探索等のため、積極的に未知の世界や古代遺跡を冒険する者たちが現われた。これらの者が「冒険者」と呼ばれるが、職業の一つとして考えられており、「連合」では冒険者に対して、必要な知識が習得できる「冒険者養成所」を開設し、卒業後「冒険者組合(ギルド)」に登録する者に対しては、正式な登録証を発行している。

 もちろん、「野良冒険者」は存在するが、一般人が探索や護衛の依頼を行う際には、公的機関であるギルドを通して登録冒険者に依頼がされるのが通常である。

パクス地方における魔法

 魔法の存在は疑われてはおらず、魔法使いも怪しい職業とはされていない。むしろ、古代からの知識の一つが魔法であり、魔法使いはそれを研究する者ととらえられている。もっとも、メディアが未発達であるので、一般の人々が魔法に触れる機会は極めてまれであり、魔法の発動に対して驚いたり、魔法使いに対して好奇の目が向けられるということはあるだろう。

パクス地方における宗教

 人間はさまざまな神を信仰しており、多神教の世界である。一方で、亜人種は神を信じていない。もっとも、自然界の力の象徴である精霊とは近しい関係にあるようだ。

パクス地方における通貨

 1G(ゴールド)=100S(シルバー)=1000C(カッパー)。

 1Cは10円ぐらいの価値だが、一般的に農産品は安く工業製品は高い。物々交換なども行われているため、農業や漁業従事者は少ない現金収入でも不足なく暮らしている。高額貨幣の代わりには、各種宝石が使われる。

モンスター

 GMは様々なモンスターを登場させることができるが、ここでは参考までにいくつかの例を紹介する。なお、HP等は平均的な数値であり、個体によって若干の差がある。

ジャイアントクラブ

H P・・・・・5

与ダメージ・・・1~3

防御力・・・・・13

魔法防御力・・・5

備 考

 体高1mはある巨大なカニ。片手の大きなハサミを振り回して攻撃してくる。肉食で狂暴。洞窟等に巣を作るが、獲物の残骸や死んだ仲間の殻などを一か所にまとめておく習性がある。

ジャイアントラット

H P・・・・・2

与ダメージ・・・1~2

防御力・・・・・6

魔法防御力・・・5

備 考

 体高30CMはある巨大なネズミ。群れを成していることが多い。噛みつきで攻撃してくるが、恐ろしいのはその直接ダメージよりも、媒介している病気である。

 病気を媒介しているジャイアントラットに攻撃を受けた場合は、筋力チェックを行う。修正後の数値が3以下の場合は熱病に感染する。(チェックのダイスの目が3の場合は修正の有無にかかわらず熱病に感染する。) 感染した場合は、高熱によりすべての行動に大幅なマイナス修正が加えられる。

グリーンスライム

H P・・・・・4

与ダメージ・・・1~3

防御力・・・・・9

魔法防御力・・・7

備 考 

 不定形のゲル状生命体。洞窟や廃墟の壁や天井に染みついていることが多い。形を変えて冒険者に飛びつき、その体を体内に取り込んで消化しようとする。火に弱く、松明などで攻撃すると大きなダメージを与えることができる。(命中すれば即活動不能にすることが可能)

トロール

H P・・・・・15

与ダメージ・・・武器による+2。大型の棍棒を用いることが多い。

防御力・・・・・7

魔法防御力・・・5

備 考 

 山岳地帯にすむ体長3mを超える巨人。動作は遅く(先制権判定-2)、知能も低いが、その巨体と剛力は冒険者の脅威となる。

動く石像

H P・・・・・10

与ダメージ・・・1~4

防御力・・・・・12

魔法防御力・・・10

備 考 

 魔法により仮の生命が与えられた石像でその拳で攻撃してくる。単純な命令を与えられている場合が多い。(「侵入者の撃退」「宝箱の守護」など)

ミノタウロス

H P・・・・・15

与ダメージ・・・1d6+1

防御力・・・・・10

魔法防御力・・・9

備 考 

 牛頭人身のモンスター。身の丈は2mを超える。両手で持った大きな斧で攻撃をしてくる。迷宮の中心に住み、迷い込んだ冒険者を倒していると言われている。

笑う金庫

H P・・・・・7

与ダメージ・・・1~4

防御力・・・・・9

魔法防御力・・・12

備 考 

 金庫の形をしたモンスターというよりは、古代魔法王国時代に作られた「意志を持つ金庫」である。持ち主以外のものが近づくと、突然扉を開け閉めしてその者の腕を喰いちぎろうとする。

 不用意に近づいた者があれば、最初のターンは笑う金庫が先制攻撃をすることになる。また、次のターンからは魔法により動いて、体当たり攻撃をしてくる。なお、「魔法の感知」で通常の金庫と区別することが可能である。

火喰い鳥

H P・・・・・4

与ダメージ・・・1~3

防御力・・・・・6

魔法防御力・・・10

備 考 

 火山などに生息する体高80cmほどの飛べない鳥。肉食で凶暴な性格をしており、なわばりに入ったものを強力なくちばしで攻撃する。その体毛は火に強く、火や熱による攻撃の威力を半減する。

ヘルハウンド

H P・・・・・10

与ダメージ・・・1~4又は火炎(1d6)

防御力・・・・・8

魔法防御力・・・8

備 考 

 3つの頭を持つ魔犬。古代魔法王国時代に作られた魔獣と考えられており、迷宮や洞窟の奥に生息する。毎ターン、3つの頭のうちどれか一つが攻撃してくるが、真ん中の頭は口から火炎を吐いて攻撃してくるので注意が必要である。

 炎の攻撃は、ヘルハウンドに攻撃を加えているキャラクター2人までを同時に攻撃できる。攻撃を受けたキャラクターは魔法防御力によるチェックを行い、魔法防御力以上の値を出したものは、火炎による攻撃のダメージを半減できる。(小数点以下端数は切り上げ)

マンイーター

H P・・・・・13

与ダメージ・・・1~4

防御力・・・・・6

魔法防御力・・・4

備 考 

 砂地や草地に生息する巨大な環形動物。つまり、大きなゴカイである。通常は土中に潜み、獲物が頭上を通りかかったときに頭を出し攻撃してくる。体長は3mを超え、前端の口に当たる部分には大きな歯が並んでいる。海辺にも同種のモンスターが生息しているとの報告がある。

ユニコーン

H P・・・・・8

与ダメージ・・・1d6(蹴り)又は1~3(角)

防御力・・・・・12

魔法防御力・・・14

備 考 

 額から長い角が生えた白馬。神獣とも呼ばれる。山岳地帯の奥など極めて限られた場所にのみ生息し、その角は万病を癒す効果があるとして高値で取引されている。(もちろん、そのほとんどは偽物ではあるが。)

 後ろ足での蹴りは強烈で、人を寄せ付けないが、清らかな乙女にだけ心を開くといわれている。

大サソリ

H P・・・・・5

与ダメージ・・・1~2及び毒

防御力・・・・・9

魔法防御力・・・8

備 考 

 体長30センチほどの大きなサソリ。尻尾に毒針を持つ。尻尾による攻撃が命中した場合、毒チェックを行う。3d6して出た目に筋力による修正を加えた値が6以下となった場合は毒の影響を受ける。体が痺れ、先制権判定に-2の修正、命中判定に-4の修正が加えられる。毒の影響は2時間程度続く。

首なしの騎士

H P・・・・・18

与ダメージ・・・1d6+1

防御力・・・・・13

魔法防御力・・・14

備 考 

 首なしの騎士の姿をした強力なアンデットモンスター。胸部鉄板鎧を装備し、短槍を武器としている。他のアンデットモンスターと同様に、通常の武器ではダメージを与えることができない。

 首なしの騎士は、犠牲者の首を切り取り自分の体に合わせてみるが、あったためしはない。蒼ざめた馬に乗っていて、馬上から地上の敵に短槍で攻撃する場合は、命中判定+1を得る。

蒼ざめた馬

H P・・・・・7

与ダメージ・・・蹴り(1~4)又は冷気の息(1~3)

防御力・・・・・11

魔法防御力・・・12

備 考 

 首なしの騎士の乗馬でアンデットモンスターである。通常の武器ではダメージを与えられない。首なしの騎士を背に乗せている場合でも、蒼ざめた馬も蹴り又は冷気の息による攻撃を繰り出すことが可能である。ただし、首なしの騎士と接近戦を行っている相手のみが、攻撃の対象となる。冷気の息での攻撃の場合は、同時に二人までを攻撃の対象に出来る。

スケルトン(骸骨)

H P・・・・・6

与ダメージ・・・武器による

防御力・・・・・9

魔法防御力・・・9

備 考 

 死んだ動物の骨格が再び動き出したモンスター。アンデット(不死)モンスター。通常の攻撃ではダメージを与えることはできない。僧侶による攻撃、僧侶の祝福を受けた武器による攻撃、銀製の武器による攻撃、魔法による攻撃のいずれかでのみダメージを与えることができる。これは他のアンデットモンスターも同様である。動物の骨格をしたスケルトンは極めてまれ。人間の骨格のスケルトンが多いのは、現世への執着の強さによるものだろうか。

指差す女

H P・・・・・6

与ダメージ・・・特殊

防御力・・・・・6

魔法防御力・・・15

備 考 

 非業の死を遂げた女の亡霊。アンデットモンスターである。指を差した者の生気を吸い取り自分の活動力を回復する。指を差されたものは魔法防御力でチェックを行い、魔法防御力以上の数値を出せば1、下回った数値が出れば1~3のダメージを受ける。(完全に回避することはできない) また、そのダメージの分、指差す女のHPは回復する。

デミヒューマン(亜人種)

 世界は人間とモンスターのみで構成されているのではない。人間と同じように、独自の文化と言語を持つ種族は、モンスターと区別しデミヒューマン(亜人種)と呼ばれている。なお、人間と交わっている亜人種の中には、人間語を操るものも存在する。

 デミヒューマンにも様々な種族が存在するが、代表的な種族を紹介する。

エルフ

 人間よりも華奢な体つきで、切れ長の目、長く尖った耳が特徴。人間より先に、精霊と共に高度な文明を築いていたとされるが、現在は森林の奥や高地などの限られた土地に住み、俗界との交渉を断っている。

 稀に、何らかの目的を持ち、冒険者と行動を共にするエルフも見られる。人間より筋力は劣るが、精霊との交信や魔法に対する知識に優れる。長命であるが、神を信仰しないので、奇跡の行使はできない。

ドワーフ

 人間よりも背が低いが、がっしりとした体格を持つ。男性は長いひげを蓄えていることが多い。主に山岳地方に住む山ドワーフと森林に住む森ドワーフがおり、前者はマトック(つるはし)を手に鉱物採取、後者は斧を手に樹木の伐採を行って生活している。また、前者は頑固な性格、後者は陽気な性格と、同じドワーフであっても性格は大きく異なる。

 自分たちが、山岳地帯や森林などに追いやられたのは、エルフの用いた魔法によるものという言い伝えがあることから、エルフと魔法を嫌っている。稀に独自の目的を持つドワーフが、冒険者と行動を共にすることもある。人間より筋力に優れるが、魔法に対する知識はなく、神を信じないので奇跡の行使はできない。

コボルト

 人間よりも小柄で、鼻が突き出た風貌はどこか犬を思わせる。人間界に近い山や森に棲み、人間とトラブルを起こすことが多い。いたずら好きな性格であり、短慮である。

 欲しいものは奪い、嫌いなものは殺す。善悪という意識がなく、欲望に忠実に行動するが、知能があまり高くないので、大きな事件を計画することは少ない。人間と行動を共にすることもあるが、すぐに問題を起こしてしまう。コボルトに悪気はないのだが・・・。

ゴブリン

 人間と同じぐらいの体格だが、背が曲がり、非常に醜悪な顔つきをしている。主に洞窟や地下に潜んでいる。コボルトと違い人間と同等の知能を持っているが、自分たちが洞窟などに追いやられていることについて、世界の全てを恨んでいる。積極的に悪事を行うことを楽しむのが彼らの文化であり、種族としての夢は、地上の他種族を滅ぼし、ゴブリン帝国を設立することである。

 人間と行動を共にすることはないが、稀にゴブリン一族の中に人間の姿を見ることがある。これは、ゴブリンが、自分の死んだ赤子と人間の赤子をすり替えて、自分のこどもとして育てた「ゴブリンの取りかえっ児」である。